その226 意識をして縦を突け!
2016年のオリンピックで、ゴルフとともに7人制ラグビーが採用されたというニュースがありました。
その昔、ラガーマンのはしくれだったパパとしてはとても喜ばしいできごとです。
ラグビーの競技人口が減少しており、これを切欠に、ラグビー人気の復活を望みます。
ラグビーの魅力は、もちろん人によって違うとは思いますが、パパの場合は、個人の気持ちの強さがチームに伝播しやすく、それが観客の目にも見えるところだと思います。
「魂のタックル」という言葉をよく聞きます。
言葉で鼓舞するのではなく、態度で示す典型的なプレーです。
このようなタックルが出ると、他の選手にも伝播し、チーム全体に気合が入ります。
気合が入ると、相手とのコンタクトプレー。例えば、フォワードの選手たちによるスクラム、ラック、モールにおいて、これまで以上の力が出ます。
これは、個人の力の出具合もそうですが、気持ちが一体となったときの選手同志のリズムの一致によって、相乗効果が現れさらに顕著になります。
非科学的だとは思いますが、空気が張り詰めその場にいると、いつに間にかそのエネルギーが充満してきて、能力以上の力が出るのです。
そして、次にこの伝播は、ある程度の秩序の中で自由な空間を与えられているバックスへ受け継がれます。
相手に捕まらない限りはコンタクトプレーのないバックスからは、目に見えた気合は感じ取りにくいのですが、それでも確実にゼロ・コンマ何秒か出足が早くなります。
ディフェンスラインという、目には見えないけれども確かに存在するラインを突破することが、バックスの役目です。
仲間から楕円形のボールを受けて、瞬時のやり取りの後、相手ディフェンスを切り裂き、誰もいない空間に飛び出したときの快感は、他のスポーツにないものだと思います。
このとき、体を張ってボールを生かしてくれたフォワードの仲間も、自らを自己犠牲にしてパスを放ったバックスの仲間も、ボールを持っている選手に託すのです。
相手の猛追をかわし、ゴールラインを超えて楕円のボールを地面の触れさせれば「トライ」です。
ラグビーという競技が気高いのは、トライをしても基本的にはガッツポーズをしないところです。
これは、トライは個人で奪ったものではなく、ボールをつないできた仲間全体で奪ったものなので、個人で喜ぶことを慎むようにという考えに基づくものです。
なんと美しいことか!
同様に、レフリーには絶対服従が原則なので、明らかな誤診であっても、クレームをつけることは許されません。
稀にキャプテンがチームを代表してレフリーに質問をすることはありますが、野球やサッカーのように、面と向かって文句を言うことは許されていません。
激しいコンタクトにより血は熱くなっているのに、絶対ルールのもと、服従できるのです。
なんと爽やかではありませか!
野球やサッカーだって、やろうと思えばできるはずです。
が、これは競技の文化だから仕方がないです。
五輪の場で、ラグビーの気高さ、美しさ、そして紳士的な爽やかさが世界中に伝播すればよいと思います。
ところで、パパがラグビーの試合や練習のときによく注意されたことがあります。
「縦を突け」です。
言うまでもなく、ラグビーは斜め後方にパスを繋ぎながら前進をもくろむスポーツです。
戦略的に横に走ってフォワードに近いところでポイントを作って数的優位を形成したり、相手ディフェンスとの1対1の状況で横にステップを切ったりすることはありなのですが、それ以外は最短にゴールラインを目指すことになるため、基本はまっすぐに走ります。
しかし、パスを斜め後ろの仲間に繋ぐという意識が、効率のよい縦ではなく、効率の悪い斜めに走らせるのです。
一人でボールを持って走ると、絶対に斜めに走ることなどないのですが、仲間が居ると、無意識に斜めに走ってしまうのです。
なので、意識をして「縦を突け」といわれたのです。
これって?
そうです。仕事でもいっしょです。
一人であれば迷わず最短コースを模索するはずなのに、チームでの仕事は他人を「無意識に意識」して、最短コースではないコースを走っているのです。
最短コースの道筋は意識しなければいけません。
常に最短コースを歩む必要はありませんが、決して見失ってはいけません。
道筋から遠く離れることなく、仲間と一緒にゴールラインを目指して走って行きたいと思います。
本日のパパからのメッセージは、
「意識をして縦を突け!」
です。
戦略と役割を明確にし、適材適所の仲間が楕円のボールを繋いでいきます。
パパからのパスが君たちに繋がるまで・・