その70 自分の理念は大いに語れ。ただし、その理念も「個々の事情」の前では無力であるということを認識せよ!

昨日の昼休みにマラソンをしたのですが、週末にキャンプへ行って走れなかったこともあり、マラソン自体が1週間ぶり(中7日)となったため、久しぶりに筋肉痛になってしまいました。

ここ数か月は、なんやかんや言っても、週に2回くらい、最低でも中5日くらいでは走っていたので、筋肉痛などとは無縁だったのですが、たった2日の違いで差がでてしまうものだと実感しました。

筋肉痛は、筋肉の細胞が断裂していることから生じるといった話を聞いたことがあります。

中5日では発生しない細胞の断裂が、中7日では発生するという、不思議。

もちろん、単純な時間経過だけではなく、そのときの体調や、気温、その後走った後のケアなど、いくつもの要因が重なるとは思いますが、いずれにしろ、体内の平衡状態が保たれなくなった結果の筋肉痛であると思います。

まあ、大きく捉えると、この筋肉痛も、恒常的に痛みを感じるようなものではなく、生活に何ら支障をきたしていません。


本日、三省堂神保町本店で講演を行った福岡伸一さんは、個々には絶え間なく消長、変化、交換を繰り返しながらも、全体としてはバランスをとっていることを「動的平衡」と呼んでいました。

これは、生物学的なことに限らず、社会の営み・流れにも通じているとのことでした。

「コスモス」のアヴィン・ラズロー博士も、宇宙の営みと精神世界を融合するようなお話をされていましたが、福岡博士も科学と精神世界が融合した考えを有しているようで、とても興味深かったです。


で、福岡博士は、「生物と無生物のあいだ」を読めばわかるように、とても美しい文章の書き手だと思います。

そして、講演をはじめて拝聴させていただいたのですが、話もとてもお上手でした。


動的平衡」による細胞の繋がりを説明をするにあたって、文楽人形の手足のパーツが細い糸で繋がっているというお話をしてくれました。

文楽人形という、科学とは無縁な文学的な物体(実際の人形があるわけではないので、聞き手からすると空想の世界から、見事に科学の質感を説明されていました。

パパのような科学とは無縁の世界の人に対しても、科学の世界に誘ったくれる功績は大きいと思います。


さて、本日の講演の中で、パパが特に感銘を受けたのは、福岡博士が持っている、理想主義的な部分と現実主義的な部分の優劣の付け方でした。

福岡博士曰く、「自分は理念に基づき語り、本を書くが、個別事情の前では無力である。」

つまり、普段の行動は、信念に基づくが、個人に特別な事情がある場合は、無理に押し付けることはしてはいけない。

「自らの行動規範」は存在するが、これが絶対的なものではないことを理解しているということです。


本日のパパからのメッセージは、

「自分の理念は大いに語れ。ただし、その理念も「個々の事情」の前では無力であるということを認識せよ!」

です。


生物学など、普段は接することがない分野ですが、そこから「動的平衡」という、生物学に留まらない、「ビック・ピクチャー」的なことを考えさせられるとは、思いもよりませんでした。

偏らずにいろいろな分野の本を読み、著名人でなくてもよいので、いろいろな人の講演会を聞きに行くと、とてもよい刺激を受けますので、小さいうちからすこしづつ経験しておきましょう。